2026.07.27
入居者がいるアパートでも売れる?オーナーチェンジの仕組みと注意点
アパートの売却を検討する際、「現在入居者がいる状態でも売却できるのだろうか」という疑問を抱く方は少なくありません。全室が空室になるタイミングを待つべきなのか、あるいは立ち退き交渉が必要なのかと不安に感じるケースもあるでしょう。
結論から言うと、入居者がいる状態のアパートでも売却は十分に可能です。この方法は不動産取引において「オーナーチェンジ」と呼ばれています。
この記事では、入居中のアパート売却について、オーナーチェンジという仕組みの基礎知識から、売却活動におけるメリット・デメリット、そして少しでも高く、かつ安全に売却するためのポイントを解説します。
アパートは入居者がいても売れる?
アパートなどの収益物件を売却する場合、入居者の有無は売却手法を決定する重要な要素となります。まずは、入居者がいる状態で物件を売却する仕組みの根本的な部分を整理していきましょう。
入居者がいてもオーナーチェンジという方法でそのまま売却可能
入居者が生活している状態のアパートは、「オーナーチェンジ」という形態をとることで、そのまま売却することができます。
オーナーチェンジとは、文字通り「入居者はそのまま、物件の所有者(オーナー)が変更(チェンジ)される」ことです。入居者と結んでいる賃貸借契約の権利や義務、そして敷金などの預かり金は、すべて新しい所有者へと引き継がれる仕組みとなっています。そのため、売却のためにわざわざ入居者に退去してもらう必要はありません。現在の稼働状況を維持したまま、物件の所有権のみを買主へと移転することができます。
オーナーチェンジでアパートを売却するメリット
アパートをオーナーチェンジで売却することは、売主・買主の双方にとってメリットが存在します。
退去交渉や立ち退き料の負担が不要になる
入居者を退去させてから空室状態で売却しようとする場合、賃貸人(オーナー)側からの契約解除には「正当な事由が必要」と借地借家法で定められています。単に「物件を売りたいから」という理由だけでは、入居者を強制的に退去させることはできません。
退去してもらうためには、個別の立ち退き交渉を行い、引っ越し費用や新居の契約費用などの名目で「立ち退き料」を支払う必要が生じるのが一般的です。さらに、話し合いがまとまらなければ、数ヶ月から数年単位の時間がかかることもあります。オーナーチェンジであれば、こうした退去交渉や予期せぬコスト負担を回避することが可能です。
買主側にも「すぐ収益化できる」というメリットがある
オーナーチェンジ物件は、投資家(買主)にとっても魅力があります。空室のアパートを購入した場合、引き渡し後にリフォーム工事を行ったり、仲介会社に依頼して新たな入居者を募集したりしなければなりません。入居者が決まるまでの期間は無収入となり、安定した収益を得るまでに時間を要します。
その一方で、すでに稼働しているオーナーチェンジ物件であれば、物件の引き渡しを受けたその日から家賃収入が発生します。融資を受ける金融機関に対しても、現在の家賃収入を実績として提示できるため、ローンの審査が通りやすくなる傾向があります。このように、買主側にとっても「すぐに収益化できる」という明確なメリットがあるため、満室稼働に近いアパートは市場で高い需要があります。
オーナーチェンジでアパートを売却する際のデメリット・懸念点
メリットが多い一方で、オーナーチェンジならではのデメリットや注意すべき点も存在します。これらを事前に把握しておくことで、売却活動中のトラブルを未然に防ぎやすくなります。
室内状況の確認が難しく修繕リスクを警戒されやすい
オーナーチェンジ物件は、入居者が生活しているため、満室稼働の場合は購入希望者が「室内の内見(見学)をできない」という点です。
内見が難しい場合、買主は、図面や外観、売主からの情報をもとに購入を決断しなければなりません。室内の設備の劣化具合や、クロスの汚れ、水回りの状態を直接確認できないため、購入後に問題が見つかる可能性があります。買主が安心して購入判断ができるよう、過去の修繕履歴をしっかりと整理し、売主側から情報をできるだけ細かく提示すると良いでしょう。
入居者の属性やトラブルに関する情報開示が求められる
新規で入居者を募集する場合は入居審査を行えますが、オーナーチェンジの場合、買主が得られる既存入居者の情報は「前オーナーから引き継ぐ資料のみ」と限定的です。
買主は、「家賃滞納者がいないか」「ゴミ出しのルール違反や、他の入居者とトラブルを起こす人物がいないか」といった点を気にします。一般的に、賃料設定が高額な物件は入居者の属性も安定する傾向にありますが、低額な物件ではトラブルリスクが警戒されやすくなります。
売却を有利に進めたいがために、こうしたネガティブな情報を隠そうとするのは大変危険です。引き渡し後に問題が発覚すれば、契約不適合責任を問われる事態になりかねません。マイナス要素であっても、ありのままの事実を事前に告知する誠実さが求められます。
アパートをオーナーチェンジで高く売却するためのポイント
アパートを適正価格、あるいは少しでも高く売却するためには、事前の準備と正確な情報開示が不可欠です。ここでは、3つのポイントを解説します。
正確なレントロール(家賃明細表)を作成する
買主がオーナーチェンジ物件を購入する際、重要視する資料が「レントロール(家賃明細表)」です。レントロールとは、各部屋の契約状況が一覧で記載されている資料で、物件の収益性を判断するために使われます。
レントロールに記載する主な項目は以下の通りです。
- 部屋番号・専有面積(平方メートル)
- 現在の入居状況(空室か入居中か)
- 入居者の属性(個人か法人かなど)
- 賃貸借契約の締結日・更新日
- 毎月の賃料・共益費・管理費
- 預かっている敷金・保証金などの額
- 駐車場や駐輪場の契約状況
- 入居者から毎月預かる町内会費
これらの情報に誤りや抜け漏れがあると、買主の購入判断に影響を及ぼしかねないため、正確な作成を心がけましょう。管理会社に委託している場合は、最新のレントロールを発行してもらうよう手配しましょう。
敷金の引き継ぎルールを確認する
オーナーチェンジの際は、入居者から預かっている「敷金」の取り扱いに注意が必要です。売買が成立した場合、敷金は旧所有者(売主)から新所有者(買主)へ引き継がれるのが法律上の原則です。
新所有者への敷金返還義務の承継
民法第605条の2の規定などにより、不動産の所有権が移転すると、それに伴って賃貸人たる地位も新所有者に移転します。このとき、旧所有者が預かっていた敷金の返還義務も新所有者へと引き継がれます。
家賃滞納や修繕履歴などのマイナス情報も隠さず開示する
高く売りたいがために、物件にとって不利な情報を隠すことは絶対に避けなければなりません。例えば、「特定の部屋で数ヶ月の家賃滞納が発生している」「過去に雨漏りがあり修繕した」「入居者同士の騒音トラブルがある」といったネガティブな情報も含めて、必ず事前に買主に告知する必要があります。
契約不適合責任を問われないための対策
不動産売買においては、引き渡された物件が契約内容と異なる場合(隠れた瑕疵など)、売主は「契約不適合責任」を問われる可能性があります。もし、雨漏りやシロアリ被害などの事実を隠して売却し、売却後にそれが発覚した場合、買主から修繕費用の請求や契約解除、最悪の場合は損害賠償を請求されるリスクがあります。
これを防ぐためには、修繕履歴や設備の不具合、告知事項(心理的瑕疵など)をすべて書面に記載して買主と合意しておくことが、売主自身の身を守ることにつながります。
売却事情に合わせて「仲介」か「買取」を検討する
アパートを売却する方法には、不動産会社に買い手を探してもらう「仲介」の他に、不動産会社自身が直接物件を買い取る「買取」という選択肢もあります。それぞれメリット・デメリットがあるため、売却の目的に合わせて選択しましょう。
高値売却を目指すなら「仲介」がおすすめ
時間に余裕があり、市場の相場で少しでも高く売却したい場合は「仲介」がおすすめです。広く投資家に向けて情報を公開することで、より条件の良い買主を見つけやすくなるためです。築浅で満室稼働しているなど、好条件の物件であれば、スピーディーに取引が進みやすいでしょう。一方で、買主探しが難航した場合、売却までに時間がかかってしまう可能性があります。
早期売却なら「買取」がおすすめ
一方で、現金化を急いでいる場合や、築古で修繕が必要といった物件の場合は、「買取」がおすすめです。業者が直接買い取るため、買主を探す期間が不要となり、短い期間で売却が完了します。また、プロである不動産会社が買い取るため、売主の契約不適合責任が免責されるケースが多く、売却後のトラブルリスクを減らせる点もメリット。ただし、買取価格は市場相場の7割〜8割程度になるのが一般的であるため、仲介と比較して低くなりやすいです。
オーナーチェンジによるアパート売却の流れ
実際にオーナーチェンジでアパートを売却する際、どのような手続きと準備が必要になるのでしょうか。ここでは、短期間で売却できる「買取」の場合のアパート売却の流れを解説します。
1. 物件の現状把握
まずは、売却したい物件の状態確認を行います。売却査定では、アパートの状態をより正確に伝えることが、スムーズかつ精度の高い価格提示につながります。
査定を依頼する段階で以下の書類を準備しておくと良いでしょう。
- 購入時の売買契約書
- 工事請負契約書
- 重要事項説明書
- 入居者との賃貸借契約書
- 建物・土地の図面
- 賃貸借契約の一覧表(レントロール)
- 修繕履歴をまとめた資料
2. 現地調査・査定
情報が整理できたら、不動産会社へ査定を依頼します。不動産会社が、不動産周囲の販売価格・地価・物件の資産価値を算定し、査定額が提示されます。
買取の場合、提示された「査定額」がそのまま「買取価格」となるのが基本です。不動産会社から提示された価格に納得できたら、具体的な売買条件(契約日や売買に必要な書類・手続き等)のすり合わせを行います。
3. 不動産会社との売買契約の締結
価格や諸条件について双方が合意に至れば、不動産会社と直接売買契約を締結します。
4. 決済・引き渡しと賃貸借契約の引き継ぎ
契約後、指定された期日に残金の決済と物件の引き渡しを行います。入居者がいるオーナーチェンジの場合、入居者はそのまま引き継がれます。また、入居者に対して「賃貸人変更通知書」を送付し、建物の所有者が変更になったことを通知しましょう。
詳しいアパート買取の流れについては、下記の記事も併せてご覧ください。
アパートを売却する流れは?買取の流れや事前準備、売却タイミングを解説
まとめ|入居者がいるアパートをスピーディーに売却するなら買取がおすすめ
入居者がいるアパートでも、オーナーチェンジなら、立ち退き交渉の手間なく売却することが可能です。しかし、入居者がいる中での売却活動では、内見が難しいケースもあるため、アパート情報の収集・共有が大切です。
「少しでも早くアパートを売却したい」と考える方には、「買取」がおすすめです。買取では、不動産会社が直接アパートを買い取るため、仲介のように買主を探す期間を短縮することができます。一方で、一般的に仲介よりも低い価格で査定されるため、なるべく高く売却するためには、実績が豊富で市場を理解している「物件の価値を正しく判断してくれる不動産会社」に依頼することが重要です。
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