2026.08.28
家賃滞納アパートの売却方法|滞納トラブルを抱えた物件を手放すには
アパートなどの収益物件を運用する際、家賃滞納は経営上の大きなリスクになります。滞納状態が長期化すると、キャッシュフローの悪化だけでなく、法的手続き・交渉にかかる時間や、精神的な負担も増えます。こうしたお悩みを抱えているなら、アパートの売却を選択肢として検討してみるのも手です。
この記事では、家賃滞納アパートの売却の可否や、物件を手放す具体的な方法、注意点を解説します。
家賃滞納があるアパートは売却できるのか?
家賃滞納者がいるアパートでも売却は可能
家賃滞納者がいる状態のアパートであっても、売却することは可能です。売主と買主の合意さえあれば、入居者の家賃滞納を理由に法律上の売却手続き(所有権移転登記など)が差し止められることはありません。
売却時に滞納状態が与える影響
滞納者がいても売却が可能である一方で、滞納状態が一般市場における売却価格や買い手探しに与える影響は小さくありません。背景には、買い手側が背負うリスクの高さがあります。
アパートの買主は、安定した利回りを得ることを目的に収益物件を購入します。家賃滞納者がいると、将来的な収益が不安定になります。さらに、購入後に立ち退き交渉や法的対応などの予期せぬコスト(弁護士費用など)が発生する懸念もあります。
そうした理由から、一般市場(仲介を通じた個人投資家などへの売却)においては、滞納物件は敬遠されやすいです。買い手が現れた場合でも、こうしたリスクや対応費用を見越した価格交渉が行われます。そのため、相場よりも売却価格が下がりやすくなります。
家賃滞納アパートを売却する3つの方法
家賃滞納者がいるアパートを売却する際には、大きく分けて3つの選択肢があります。それぞれの特徴を比較検討してみましょう。
方法1:入居者がいるまま売る(オーナーチェンジ)
滞納問題を解決せず、現在の入居者が居住した状態のまま売却する方法です。いわゆる「オーナーチェンジ物件」として市場に売り出します。
メリット
売却前の立ち退き交渉や法的手続きといった準備を省略し、すぐに売りに出せる点がメリットです。立ち退き交渉や裁判などに時間や費用をかける必要がなく、早期に販売活動を開始できます。
デメリット
一方で、買い手が見つかりにくいデメリットがあります。将来の手続きの手間や空室リスクを懸念し、購入希望者の購入ハードルが高くなる恐れがあります。その結果、売却期間の長期化や、売却価格の大幅な下落につながりやすくなります。
注意点
売買に際しては、家賃滞納の事実、滞納期間、これまでの督促の経緯などを買い手に対して正確に告知しましょう。これらの事実を隠して売却した場合、契約不適合責任を問われるリスクが生じます。買主とのトラブルを防ぐためにも、正直な情報開示が大切です。
詳しくは「アパートを売却する流れは?買取の流れや事前準備、売却タイミングを解説」「入居者がいるアパートでも売れる?オーナーチェンジの仕組みと注意点」もご覧ください。
方法2:退去を済ませてから売る
売却前に、売主自身で滞納者への督促や法的手続きを行い、部屋の明け渡し(退去)を完全に済ませた上でアパートを売却する方法です。
メリット
滞納というネガティブな要因が解消されるため、一般的な収益物件として、市場相場に近い価格で売却できる可能性が高まります。買い手側が滞納トラブルを引き継ぐ心配がないため、買い手側の懸念が減ります。
デメリット
立ち退き交渉には時間と費用がかかります。交渉がスムーズに進まなければ、強制執行に至るまでに数ヶ月の期間を要する場合があります。また、その期間中も家賃収入は途絶え、弁護士費用や裁判費用などの持ち出し資金が発生します。
注意点
入居者を退去させる際、法的手続きを経ず、鍵を交換したり家財を搬出したりして強制的に退去させる「自力救済」は、原則として認められません。違法と判断されるおそれがあるため、明渡しを求める場合は適切な法的手続きを踏む必要があります。
方法3:専門の不動産会社に買取を依頼する
一般の買主を対象とする仲介ではなく、トラブルを抱えた物件も取り扱っている不動産会社へ直接売却(買取)を依頼する方法です。
メリット
メリットは、家賃滞納トラブルを抱えたまま、比較的早期に物件を手放せる点です。実績のある不動産会社であれば、煩雑な手続きをまとめて相談できるため、現状のまま買い取ってもらえる場合があります。退去交渉や買い手を探す手間が省けるため、スムーズに現金化できるのも魅力です。
デメリット
不動産会社は買取後、自社で滞納問題を解決し、再販や運用で利益を得ます。その分の費用が差し引かれるため、一般相場よりも買取価格が低くなる傾向があります。
注意点
不動産会社であればどこでも買い取ってくれるわけではありません。一般的な仲介をメインとする会社では、滞納物件の買取を断られるケースもあります。そのため、訳あり物件や権利関係の複雑な不動産の買取実績が豊富な不動産会社を選ぶ必要があります。
滞納トラブルを自力で解決する場合の注意点
オーナー自身で滞納トラブルを解決してから売却しようとする場合、法律に基づいて手続きを進める必要があります。賃貸借契約においては「信頼関係破壊の法理(信頼関係が修復不可能な場合にのみ契約解除を認める原則)」が適用されるため、単に数日滞納しただけで直ちに契約解除・退去を求めることは困難です。
滞納発生から契約解除までの具体的な手順
家賃滞納を自力で解決する場合、放置せず段階的な督促を行い、順序を守って手続きを進める必要があります。基本的な手順は以下の通りです。
- 口頭や通常書面での連絡
滞納初期は入金忘れの可能性も考慮し、まずは電話や手紙で支払いを求めます。解決しない場合は、期限を区切って督促状を送付します。 - 内容証明郵便による催告
通常の督促に応じない場合、配達証明付きの「内容証明郵便」で催告書を送付します。支払期限と「期限内の入金なき場合は契約を解除する」旨を明記します。 - 連帯保証人への請求
内容証明で指定した期日を過ぎても支払いがない段階で、連帯保証人へ連絡し代理弁済を求めます。 - 法的措置への移行
本人・保証人のどちらからも支払ってもらえない場合、明け渡し訴訟などの法的手段に踏み切ります。
なお、最終的な契約解除や法的措置が認められるには、過去の判例に基づき「オーナーと入居者の信頼関係の破壊」が客観的に証明される必要があります。一般的には、3ヶ月程度以上の家賃滞納があり、催告しても支払いがない場合に、信頼関係の破壊が認められやすいとされています。ただし、最終的な判断は滞納期間や督促状況、入居者との経緯など個別事情によって異なります。
明け渡し訴訟と強制執行にかかる期間・費用
内容証明での催告に応じない場合、法的手段として「建物明渡請求」および「強制執行」へと進みます。なお、訴訟の途中で入居者が第三者に部屋を転貸する(占有者をすり替える)ことを防ぐため、提訴前に「占有移転禁止の仮処分(裁判中に別の人に占有が移るのを防ぐ手続き)」を行うのが実務上よく取られる手法です。この手続きを怠ると、せっかく勝訴しても「判決文に記載された相手と実際の居住者が違う」という理由で、強制執行が止まってしまうリスクがあります。
期間の目安
訴訟の手続きにおおむね3ヶ月から12ヶ月、勝訴判決(または和解)後の強制執行におおむね1ヶ月から3ヶ月を要します。順調に進んでも解決まで約半年、相手方が争う場合は1年以上かかってしまうことも少なくありません。
費用の目安
裁判所への印紙代(建物の固定資産税評価額に基づく)や予納郵券、仮処分のための担保金に加え、最も大きな負担となるのが強制執行時の実費です。執行官の指揮のもと家財道具の搬出・保管・廃棄を行うため、専門業者への支払いとして数十万円から100万円規模の費用が発生することもあり、これらをオーナーが一旦立て替える必要があります。
これらに弁護士費用が加わるため、金銭的負担は大きくなる可能性があります。訴訟では未払賃料や損害金も併せて請求しますが、滞納者からの回収は困難なケースが多く、結果的に費用倒れになってしまうリスクも、あらかじめ頭に入れておきたいポイントです。
滞納者がいるアパート売却なら、買取がおすすめ
前述の通り、自力でのトラブル解決には労力と法的リスクが伴います。そのため、家賃滞納を抱えたアパートの処分において、不動産会社への買取がおすすめです。ここでは、買取が選ばれる理由について解説します。
弁護士費用や法的手続きの負担が軽減される
買取が選ばれる大きな理由は、面倒な問題解決をプロに任せられる点にあります。専門の不動産会社であれば、現状の(滞納者が居住している)状態のままでアパートを買い取る場合があります。
売却が成立した時点で所有権は業者に移転するため、売却完了後の立ち退き交渉や裁判、強制執行といった面倒な手続きは、すべて新所有者である専門業者が進めてくれます。元のオーナーは、弁護士を探す手間をかけたり、高額な費用を負担したりせずに済みます。
契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)を免責とする契約を結べる場合がある
不動産会社による買取では、売買契約の内容によって、売主の契約不適合責任を免責または限定する特約を設ける場合があります。築年数が古いアパートや室内を十分に確認できない物件では、売却後の責任を限定できることは売主にとってメリットになります。ただし、売主が不具合などを知りながら買主に告げなかった場合には、免責特約があっても責任を免れないことがあるため、把握している事実は正確に伝えることが重要です。
迅速な現金化
買取業者は自社の資金で直接不動産を購入するため、買い手を探す仲介期間が不要です。また、現状のまま買い取るため、退去交渉や原状回復の手間や費用もかかりません。売主と不動産会社の間で条件面での合意がされれば、短期間で売却が完了し、スムーズに現金化することが可能です。
トラブル物件を手放す際の不動産会社の選び方
とはいえ、すべての不動産会社が適切な対応を行えるわけではありません。家賃滞納というトラブルを抱えた物件をスムーズに売却するためには、信頼して任せられる不動産会社を選びましょう。
滞納物件の買取実績を確認する
不動産会社の情報を確認し、「訳あり物件」や「家賃滞納物件」の買取実績があるかをチェックしましょう。
一般的な物件の仲介を得意とする会社に相談しても、リスクを恐れて買取を拒否されたり、相場を大きく下回る価格を提示されたりする場合があります。過去に滞納物件の買取実績を持つ会社であれば、適正な査定価格の提示が期待できます。
弁護士や司法書士などの専門家ネットワークの有無
買取業者が専門家ネットワーク(顧問弁護士、司法書士、税理士など)を構築しているかどうかも重要なポイントです。
法的トラブルを抱えた物件を扱う上で、法務のプロとの連携体制は不可欠です。法務・税務の相談に対応できる体制が整っている会社であれば、売買契約の締結から債権譲渡の取り扱い、売却後の税務処理まで任せることができます。
家賃滞納があるアパートを売却する際のよくある質問
売却に伴う「賃貸人としての地位」や「滞納家賃の請求権」の扱いなど、よくある質問を紹介します。
Q.家賃を滞納している入居者がいても、アパートは売却できますか?
A.はい、問題なく売却可能です。
売主と買主の合意さえあれば、入居者の家賃滞納を理由に法律上の売却手続き(所有権移転登記など)が止められることはありません。
Q.売却後、賃貸人(大家)としての立場はどうなりますか?
A.新しい買主(新オーナー)へ引き継がれます。
通常、入居者が建物の引渡しを受けている賃貸アパートでは、物件の売却に伴って賃貸人としての地位も新しい所有者へ引き継がれます。
Q.売却する「前」に発生した滞納家賃は、誰が請求できますか?
A.原則として、元の所有者(売主)に請求する権利が残ります。
ただし、買主との合意によって滞納家賃の債権を譲渡することも可能です。債権譲渡を入居者に対して主張するためには、原則として売主から入居者への通知、または入居者の承諾など所定の手続きが必要になります。
Q.売却した「後」に発生する家賃は、誰が受け取りますか?
A.新しい買主(新オーナー)が受け取る権利を持ちます。
売却成立後から発生する家賃については、新所有者(買主)が請求権を持ちます。
滞納家賃の扱いは、売買契約において取り決めることができます。所定の手続きを正しく踏めば、滞納トラブルが未解決のままでもアパートを売却することが可能です。
まとめ|家賃滞納アパートの売却は状況に合わせた方法の選択を
家賃滞納があるアパートであっても売却自体は可能ですが、一般市場における価格の下落や、自力で解決を図る際のハードルの高さなど、課題は少なくありません。
滞納状態を長引かせることは、収益性の低下だけでなく、精神的・経済的な負担になり続けてしまいます。物件の現状やオーナー自身の負担を考慮し、「今の状態のまま手放す」か「時間と費用をかけて解決してから売る」か、ご自身の状況に合わせて最適な方法を選んでいきましょう。トラブルによる負担を最小限に抑え、スムーズに物件を手放したい場合は、家賃滞納物件の買取実績のある不動産会社への相談がおすすめです。
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