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2023.09.29
相続した不動産を売却する流れ|相続登記の必要書類や注意点まで解説
通常の不動産売却とは異なる注意点が多々ある相続不動産。
例えば不動産を相続する場合、遺言書の有無を確認することから始まり、相続人を確定したり相続登記を申請したりする必要があります。今回は、手続きの流れや必要となる書類、不動産売却の際に注意するべきポイントをご紹介していきます。
相続不動産を売却する流れ
一戸建ての住宅、土地、マンションでも、相続不動産の売却では分割や名義変更といった手続きが必要となります。期限や要件を意識して売却を実現しましょう。
不動産を相続する際に必要な手続き
不動産を相続する場合、以下のような作業・手続きが必要になります。
①遺言書の有無を確認する
②相続人の確定
③相続財産がどれくらいか把握する(財産目録の作成)
④遺産の分け方を話し合う(遺産分割協議)
⑤相続登記を法務局に申請
⑥相続税の申告と納付(基礎控除額を超える場合のみ)
それぞれ詳しくご説明していきます。
①遺言書の有無を確認する
遺言書がある場合、基本的には遺言書に記載されている通りに相続手続きが進みます。遺言書がない場合は、相続人全員で遺産分割協議を行い、遺産の分け方を話し合いましょう。
遺産分割協議をした後に遺言書が見つかった場合、遺言書があればその内容が優先されることになります。その後の手続きを無駄にしないためにも、遺言書は早めに見つけておけると安心です。
②相続人の確定
遺言書がない場合は、亡くなった方の財産は法律で決められた範囲の親族が相続することになります。後から新たな相続人が発覚してしまうと、一度決まった遺産分割協議をやり直さなければいけなくなってしまうため、相続人の範囲はしっかり調べてから遺産分割協議を行いましょう。
③相続財産がどれくらいか把握する
相続財産がどれくらいあるのか確認し、相続財産リスト(財産目録)を作成しておくと遺産分割協議がスムーズに進められます。
④遺産の分け方を話し合う
遺言書がない場合は、相続人全員で遺産分割協議を行う必要があります。相続人が一人でも欠けた状態で行われた場合、分割協議は無効となります。相続財産である不動産を誰が引き継ぐかが決まったら、その内容をまとめた遺産分割協議書を作成し相続人全員が署名し、実印で押印します。
⑤相続登記を法務局に申請
不動産の名義を相続人に変更します。この手続きは相続登記と呼ばれ、不動産の所在地を管轄する法務局に申請します。なお相続登記は令和6(2024)年4月1日から義務化され、これを行わずに放置しておくと過料を科されてしまう場合があるので注意が必要です。
⑥相続税の申告と納付
基礎控除額が「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」を超える場合、相続税が掛かります。相続税の申告・納付期限は、相続開始を知った日の翌日から10カ月以内。期限内に申告・納付できないと延滞税が掛かってしまうため、できるだけ早く支払いましょう。
相続に必要な各種手続きの期限
相続する際に必要な各種手続きには、それぞれ期限があります。期限内に手続きを完了できるようにチェックしていきましょう。
相続放棄
相続開始を知った日から3カ月以内
限定承認(相続するプラスの財産の限度内でマイナスの負債を相続すること)
相続開始を知った日から3カ月以内
準確定申告(被相続人の1月1日から他界した日までの所得を確定申告すること)
相続の開始を知った日の翌日から4カ月以内
遺産分割協議
期限なし
不動産を相続人同士で分割する方法
不動産を相続人同士で分割する方法は複数あります。どのような違いがあるのか見ていきましょう。
現物分割
「現物分割」は、不動産を相続人の1人がそのまま相続する方法です。一見、分かりやすい方法ですが、不動産とその他の財産で価値が異なる場合は不公平になってしまいます。
土地を分割して同じ面積で分けるとしても、形状や陽当たり、接道状況など、内容によってその価値は変わるもの。不動産の現物分割では完全に公平に分割するのは困難となるため、不満の声が挙がることもしばしばあります。
代償分割
「代償分割」は、相続人の1人が不動産を単独で相続する代わりに、他の相続人に対して代償金を支払います。特定の相続人が、他の相続人の不動産に対する相続分を買い取るものです。
自己財産から代償金を捻出する必要があるため、十分な財力がないと難しい方法とも言えます。
換価分割
「換価分割」は、相続した不動産を売却して現金化し、それを相続人で分割する方法です。その不動産に相続人の誰かが住んでいたり、簡単に買い手が見つからない物件の場合には売却自体が難しい場合もありますが、現金なので平等に分配することができます。
また、仲介で買い手が見つからない場合は、買取を利用する方法もあります。
相続不動産の売却で必要な書類
相続不動産を売るための名義変更、不動産売却ではそれぞれに必要な書類があります。どのような書類が必要となるのでしょうか?
相続登記の必要書類
相続不動産の売却で必須となる名義変更(相続登記)で必要な書類は、相続の仕方によって変わります。
それぞれの方法別で書類内容をチェックしていきましょう。
【法定相続の場合】
- 被相続人の10歳前後から死亡に至るまでの継続した全ての戸籍謄本
- 被相続人の除住民票
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人全員の住民票
- 固定資産税評価証明書
- 相続関係説明図(任意)
【遺言による分割】
- 遺言証書
- 遺言者の死亡事項の記載のある除籍謄本
- 遺言により相続する相続人の住民票
- 固定資産税評価証明書
- 受遺者の戸籍謄本
- 相続関係説明図(任意)
【遺産分割協議による分割】
- 遺産分割協議書(相続人全員自署・実印押印・印鑑証明書添付)
- 被相続人の10歳前後から死亡に至るまでの継続した全ての戸籍謄本
- 被相続人の除住民票
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人全員の住民票
- 固定資産税評価証明書
- 相続関係説明図(任意)
遺言書が自筆遺言の場合、法務局に提出する前に家庭裁判所での検認(存在および内容の確認)を行わなければいけません。
不動産売却時の必要書類チェックリスト
相続不動産の売却時に必要となる書類をまとめました。相続不動産を売るために、売主は物件購入時の重要事項説明書や登記簿謄本、土地測量図などの必要書類をそろえる必要があります。チェックリストを見ながら、抜けているものがないか確認してみてください。
▼不動産会社に売却を依頼する時に必要な書類 |
||||
チェック |
書類 |
マンション |
一戸建て |
土地 |
登記簿謄本または登記事項証明書 |
◯ |
◯ |
◯ |
|
売買契約書 |
◯ |
◯ |
◯ |
|
物件購入時の重要事項説明書 |
◯ |
◯ |
◯ |
|
登記済権利書または登記識別情報 |
◯ |
◯ |
◯ |
|
土地測量図・境界確認書 |
|
◯ |
◯ |
|
固定資産税納税通知書および固定資産税評価証明書 |
◯ |
◯ |
◯ |
|
物件の図面 |
◯ |
◯ |
|
|
設備の仕様書 |
◯ |
◯ |
|
|
建築確認済証および検査済証 |
|
◯ |
|
|
建築設計図書・工事記録書 |
△ |
|
△ |
|
マンションの管理規約または使用細則 |
◯ |
|
|
|
マンション維持費関連書類 |
◯ |
|
|
|
耐震診断報告書 |
△ |
△ |
|
|
アスベスト使用調査報告書 |
△ |
△ |
|
|
▼買主に引き渡しをする時の必要書類 |
||||
チェック |
書類 |
マンション |
一戸建て |
土地 |
本人確認書類 |
◯ |
◯ |
◯ |
|
実印 |
◯ |
◯ |
◯ |
|
印鑑証明書 |
◯ |
◯ |
◯ |
|
住民票 |
△ |
△ |
△ |
|
銀行口座の通帳(銀行振り込み先情報) |
△ |
△ |
△ |
|
ローン残高証明書またはローン返済予定表 |
△ |
△ |
△ |
|
物件のパンフレット |
△ |
△ |
△ |
(○:必要、△:任意または該当の場合のみ)
相続登記は代理人に委任する手段もある
専門的な知識と複雑な手続きが必要となる相続登記では、司法書士に依頼したほうが安心できます。依頼の際に必要となる「委任状」は司法書士が作成するものです。署名・押印をするだけで、それ以外には大きな手間はかからないので、一つの選択肢として活用しましょう。
相続不動産を売却する際の注意点
複雑な手続きがあれば、利用しなければもったいない特例もある相続不動産の売却。注意点を把握して、損することなく売却手続きを進めましょう。
相続人同士のやり取りは専門家を入れるのが確実
親族や家族とはいえ、遺産相続の話となると話がまとまらないことはよくあるものです。対象となる不動産の築年数が長い場合には、相続人となる親族の数が増え、相続人同士が顔も名前も知らないようなこともあります。
相続人同士の関係が複雑である、紛争になることが予想される場合には、無理に自分だけで進めようとせず、専門家の力を借りてみてはいかがでしょうか。
少しでも早く相続不動産を手放すことで維持費の無駄な支払いがなくなり、精神的安定にもつながります。
税金の注意点
相続不動産を売却する場合の税金は、相続人がその家に居住していたかどうかによって課税される金額が変動します。どちらの場合であっても、家を売却することで得た譲渡所得に対して、譲渡所得税、復興特別所得税、住民税が課税されますが、相続人が自宅として居住していたのであれば「居住用財産」とみなされるため、以下の特例の対象となることも忘れてはいけません。
【受けられる特例】
- 3000万円の特別控除の特例
- 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
- 10年超所有の場合の軽減税率の特例
- 特定の居住用財産の買換え特例
- マイホームの買換えの場合の譲渡損失の繰越控除
- 特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除
ここからは、重要な2つの特例についてご説明します。
親の自宅であり、相続人が住んでいない空き家を相続した場合、一定の要件を満たせば譲渡所得から3000万円を控除できる「3000万円の特別控除の特例」を受けられます。
【参考】「国税庁No.3306被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」では、相続または遺贈により取得した財産を、一定期間内に譲渡した場合に相続税額のうち一定金額を譲渡資産の取得費に加算することができます。
親から相続した家を売る場合の取得費は、親が買い入れた時の購入代金や購入手数料が該当します。住宅を相続した時に相続人が支払った登記費用や不動産取得税なども、一定額を取得費に含めることが可能です。ただし、相続開始から3年以内に売ることが要件となるため、注意しましょう。
【参考】「国税庁No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」
取得費によって税額は大きく変わるため、必要な情報はあらかじめ確認しておくようにしておけると安心です。
相続不動産の売却で損をしないために
ご紹介した「3000万円の特別控除の特例」や「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」の適用期限は、相続から3年が目安です。これらの特例を上手く使えば、節税することができます。節税したい場合は早期売却を目指すべきです。
その他にも、早期売却をおすすめする理由は2つあります。
1つ目は、相続トラブルを防止できるという点。不動産は、現金とは異なり分割が困難なものです。共有持分にすることはできても、発生するランニングコストの負担や不動産の活用方法でトラブルの原因になる可能性があります。
もう1つは、無駄な維持費を抑えられるところ。不動産は所有しているだけで、固定資産税や火災保険料など、さまざまな費用が発生します。使用する予定がない場合は、早期の売却を心掛けましょう。
不動産売却・買取のご相談は協和住建へ
今回は、相続不動産の売却についてご紹介しました。
必要書類が多岐に渡る相続不動産の売却では、相続人が自分で作成しなければならない書類もさまざまにあります。全て自分でそろえるとなると、それなりの知識と労力が必要です。
また、2024(令和6)年から相続登記が義務化され、今後はよりスピーディーに名義変更を行うことが求められます。必要書類がなかなか集められない、相続したものの放置している不動産があるなど、相続登記について疑問や不安を抱えている方はご相談ください。
【参考】不動産相続における相続登記の義務化決定|気になる罰則や注意点を解説
私たち協和住建は、創業から20年以上にわたって新潟県の不動産を取り扱ってまいりました。お客様との距離が近い地域密着型の会社だからこそ、不動産売買に関するサポートも柔軟に行っています。
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